中小企業庁は、2026年版中小企業白書・小規模企業白書を取りまとめ、本日閣議決定されました。経営環境の転換期において、中小企業は「稼ぐ力」を高め、「強い中小企業」へと成長することが重要という考えの下、労働生産性の向上に有効な取組や、経営者が持つべき基本的知識である「経営リテラシー」の強化・実践に焦点を当てて分析を行っています。
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1.2026年版中小企業白書・小規模企業白書のメッセージ
- 中小企業では、春季労使交渉において約30年ぶりの賃上げ水準が続き、最低賃金の引上げも進んでいる。日本経済の成長にとって、中小企業の持続的な賃上げの実現は極めて重要であるが、大企業と比較して中小企業の賃上げ余力は厳しいため、更なる賃上げ原資の確保が課題となる。
- また、2010年代以降多くの業種において人手不足感は強まっている。一定の試算に基づけば、労働供給制約社会の到来に伴い、中小企業の雇用者数は減少が見込まれることから、人手不足は更に深刻になるおそれがある。
- こうした経営環境の転換期にある中で、現状維持は最大のリスクといえるだろう。短期的な損益を追うのではなく、長期的な視点で事業構造・組織構造を再構築していく「戦略」を持った経営に転換し、「稼ぐ力」を高め、「強い中小企業」へと成長することが重要である。
2.2026年版中小企業白書・小規模企業白書における分析のポイント
(1)「強い中小企業」に向けた「稼ぐ力」の強化
- 「稼ぐ力」とはすなわち、付加価値を生み出す力であり、労働供給制約社会の中で、労働投入量の減少が見込まれる我が国においては、付加価値額を維持・増加させるために、労働投入量当たりのパフォーマンスを示す「労働生産性」の向上が不可欠である。中小企業の労働生産性の状況を確認すると、一人当たり労働時間は減少しつつも、付加価値額が増加していることから、時間当たり労働生産性は上昇傾向にある。また、大企業と遜色ない労働生産性を誇る中小企業も存在している。
- 労働生産性の更なる向上に向けては、価格転嫁の推進、成長投資による製品・商品・サービスの高付加価値化、事業承継・M&Aによる事業再編をはじめとした「付加価値額の増加」と、AI活用・デジタル化の促進による「労働投入量の最適化」に取り組むことが重要である。実際にこれらに取り組む企業は、取り組んでいない企業と比較して、付加価値額増加や労働投入量最適化を実現していることが確認できた。
(2)小規模事業者の経営リテラシー向上と企業間連携による事業の維持・拡大
- 経営リテラシーを「財務・会計」、「組織・人材」、「運営管理」、「経営戦略」の4つの類型に分けて分析し、小規模事業者における経営リテラシーの現状には改善の余地があるが、経営リテラシーを有する事業者は、業績や人材確保等において明確な違いを生み出していることを示した。例えば、原価管理を詳細に行う事業者ほど価格転嫁率が高く、組織活性化に取り組む事業者では採用に成功している傾向がある。
- また、小規模事業者の経営資源は限られることを踏まえれば、他の事業者との連携により「経営力」を補完することも有効な手段の一つであると考えられる。そこで本書では、事業の維持や拡大を図る小規模事業者にとって、企業間連携によって相互に補完し合うことが有効な取組であることを示した。